最近弁護士業界では、労働関係の紛争が増えていると言われることがあります。(実数を調べたわけではありませんのでご了承下さい。)

直近の1年を振り返ってみると、確かに私自身、労働問題の相談や訴訟に関わること(会社側・労働者側の両方です)が多かった気がします。で、実際に事件の処理にあたっていますと、他の紛争分野でも言えることですが、

【事前対策、メチャクチャ大切】

ということを本当に実感します。

 

例えば、労働者から会社に対して起こす訴訟で多いのが、

“未払いとなっている残業代の請求”

なのですが、やはり、証拠が不足することが多いような気がします。

労働者の方々が残業代を請求しようと思うに至るのは、おそらく色々な意味で退職が見えてきた段階が多いでしょう。(会社に対して義理を感じなくなったり、「次の仕事が無い」という恐怖を越えるか脱したりした段階など。)

残業代等の賃金は、2年で時効消滅してしまう。逆に言うと、未払い部分はおよそ2年間遡って請求できるんですが、例えば、「残業代を請求してやろう!」と思い始めてから辞めるまで半年だとすると、その前の1年半の就労状況に関する証拠が乏しいという事態が起きがちなんですね。

また、証拠を集めようとされる方もおられるんですが、集めた証拠が裁判の際にどれくらい有効に扱われるかというのは他の証拠等との関係にもよりけりなところもあり、会社も会社で色んな反論を仕掛けてきますから、証拠を「どう」残すかというのも極めて難しい問題。

だから本当は、「なんかおかしいなぁ…」という段階で相談に来て欲しいんですよね。未払いの恐れがあるかどうかもそうなんですが、オフィスの状況も色々と伝えた上で、具体的な証拠の押さえ方までアドバイスを受けておく。そうすることで精神的にも楽になりますし。

 

企業に対する法律サービスの分野に、予防法務、つまり、“紛争になる前に先手を打つようアドバイスする”というものがありますが、これは本当は個人にも大事なコトなんだと思います。相続なんかではよくありますが、離婚や労働問題なんかだとまだまだ進んでいない感じ。

タイムカード以外にも、注意しなきゃいけないところは他にも色々とあります。「嫌な思いをしたら、とりあえず相談してみる」という感じになれば、変わっていくのかも。うーむ。戦いは続く。